【GBA】第3世代前期シングル概論

このたび電子版が無料となりました『ポケモンエメラルドシングルバトル考察本』に掲載のコラム、「第三世代前期シングル概論」と同様の内容+参考リンクです。


ルール


 第三世代前期シングルとは、2002年11月21日に発売された『ルビー』『サファイア』から2003年11月21日に発売された『ポケモンコロシアム』直前までの要素のみで対戦するルールである。ルールの詳細は以下の通りとなる。

★基本的に『ルビー』『サファイア』のみの環境
ホウエン図鑑の No.1~No.195が使用可能
★見せ合いありシングル6→3
ポケモンのレベルは50以下(フラットバトル機能はない)
ポケモンの種族・持ち物の重複不可
★複数催眠禁止
ラティアスラティオスの使用禁止(第三世代環境当時の「あんぐらオフ」で採用されていたルールを踏襲)
★お互いの手持ちにソーナンスソーナノがいた場合、両者ともソーナンスソーナノを選出することができない(特性『かげふみ』のポケモン同士が戦闘に出てしまうと、お互いに交代ができなくなり膠着状態となってしまうため)

 ※『ルビー』『サファイア』発売以降から『ポケモンコロシアム』発売直前までの使用可能な要素としては、『チイラのみ』『リュガのみ』『カムラのみ』、『しんそくジグザグマ、特別な技を覚えた配布ポケモン(『ねがいごと』ピチュー等)が挙げられる。
 ※『ポケモンコロシアム』発売直前時点では両立ができない技構成も存在する。
  例:第三世代前期シングルのマッスグマは『しんそく』と『みがわり』をそれぞれ習得できるが、両立は不可。

特徴


 2020年現在*1の第三世代シングル対戦のルールとして一般的な「ラティアスラティオスあり/なし後期シングル」と比較すると、『ポケモンコロシアム』以降の要素が使用できず、『ルビー』『サファイア』に登場するポケモンのみで対戦するという部分が特徴的である。『ポケモンコロシアム』『ファイアレッド』『リーフグリーン』『エメラルド』『ポケモンXD 闇の旋風ダーク・ルギア』で初登場したポケモンだけではなく、これらのタイトルに数多く収録されている有力な『おしえわざ』も使用できないという部分も環境に大きな影響を与えている。

 具体的には、後期シングルの環境ではおなじみのカビゴン・サンダー・ゲンガー・スイクンライコウハピナス・サンダースといった顔ぶれが軒並み存在せず、『おしえわざ』によって多くのポケモンが使用できるようになった『でんじは』『いばる』『みがわり』などの技は使用できるポケモンが非常に限られている、という後期シングルとは一味違った環境になっている。

 これらを踏まえて第三世代前期シングルの対戦で特に意識するべき項目として、
ボーマンダの全ての型に対応できるか
ヘラクロスフーディンメタグロス・ケッキングで崩壊しないか
レジアイス+ミロカロスレジスチルヌケニンに詰まされないか
ソーナンスサーナイトレアコイルに狩られないか
などが挙げられ、これらに留意しながら構築を組む必要がある。

 さて、ここでこのルールにおける主要なポケモンを見ていきたいと思う。

個別考察


ボーマンダ

 素早さが高いポケモンが少ない環境の中で、高い素早さ・優秀な耐性と特性『いかく』・そして決定力を兼ね備えたポケモン。『いじっぱり』『こだわりハチマキ』『すてみタックル』により『ずぶとい』HB振りのミロカロスを83.8%で2発という計算結果は後期シングルでもおなじみであるが、前期シングル環境には性能の高いノーマル耐性持ちが少ないため、その火力がより際立つ。ノーマル耐性持ちに対してはサブ技を駆使するか特殊型で採用して倒すこともできるため、この環境では1体で全ての型のボーマンダを受けることは難しいという存在になっている。ただ、使用者側としては『こだわりハチマキ』型は『すぶとい』B振りソーナンスに『すてみタックル』を99%で2耐えされてしまい、『こだわりハチマキ』以外の型(特殊型・『りゅうのまい』型)はミロカロスを筆頭とした水タイプに容易に受けられてしまう点に注意が必要になる。

【型サンプル】

☆『こだわりハチマキ』型
特性:いかく
性格:いじっぱり
実数値:171-205-100-117-100-152
努力値:4-252-0-0-0-252
技:すてみタックル じしん アイアンテール だいもんじ
持ち物:こだわりハチマキ

☆特殊型
特性:いかく
性格:ひかえめ
実数値:171-*-107-170-100-152 ※理想個体値は31-3-31-30-31-31
努力値:4-0-52-200-0-252
技:ドラゴンクロー だいもんじ ハイドロポンプ めざめるパワー電
持ち物:りゅうのキバ


ミロカロス

 『オボンのみ』や、『まもる』+『たべのこし』を持たせない限りは『いじっぱり』『こだわりハチマキ』『すてみタックル』により高確率2発で落ちてしまうため一任はできないながらも、対ボーマンダを高い精度で任せることができるポケモン。後期シングルのミロカロスカビゴン・サンダー・ゲンガー(電気技持ち)を筆頭とした上位のポケモンに対して不利になってしまうが、それらが不在の前期シングル環境では自身の持つ性能を遺憾なく発揮することができる。以下で紹介している型は、『まもる』+『たべのこし』により、『こだわりハチマキ』型を含めた多くのボーマンダに対して安定させている。『まもる』で『こだわりハチマキ』持ちの技を固定する動きも効果的で、ヘラクロス入りに対して初手で選出しやすくなる。『どくどく』も『まもる』との相性が良いが、ヘラクロス入りに対しては安易に選択しないように注意。

【型サンプル】

☆『どくどく』+『まもる』型
特性:ふしぎなうろこ
性格:ずぶとい
実数値:202-*-144-120-145-102
努力値:252-0-252-0-0-4
技:なみのり どくどく まもる じこさいせい
持ち物:たべのこし


レジアイス

 高い特殊耐久指数により、低火力の特殊を詰ませられるポケモン。最上位のボーマンダに対しても、『こだわりハチマキ』『アイアンテール』持ち以外は対面で勝つことができる。後期シングルと同様にメタグロスを強く呼んでしまうが、前期シングルはミロカロスを筆頭とした水タイプが強い環境であるため、後続で比較的対処しやすい。ヘラクロスは後続でも対処しにくく、厳しい相手となる。対『めいそう』エスパーは『だいばくはつ』での遂行となるため、『アンコール』フーディンや『おにび』サーナイト、『あついしぼう』+『みがわり』ブーピッグ等に抵抗されうる点に注意。以下で紹介している型の特殊耐久は、C189レアコイルの『10まんボルト』やC140ランターンの雨+『ハイドロポンプ』に安定するライン。

【型サンプル】

☆『ねむる』『だいばくはつ』型
特性:クリアボディ
性格:なまいき
実数値:187-70-120-148-247-63
努力値:252-0-0-220-36-0
技:れいとうビーム 10まんボルト ねむる だいばくはつ
持ち物:カゴのみ


メタグロス

 後期シングルでも存在感を示しているおなじみのポケモン。この環境でも上位の存在ではあるが、前期シングルのメタグロスは『だいばくはつ』『すてみタックル』『かみなりパンチ』『いわなだれ』といった崩しの手段を習得できないため、後期シングルほど派手な活躍は期待できない。レジアイスに強く、『めいそう』持ちのエスパーに強めで『こだわりハチマキ』持ちのノーマル・飛行・岩耐性も確保できるという、優秀な耐性による穴埋め的な位置付けとなっている。『だいばくはつ』『すてみタックル』がないことから『こだわりハチマキ』を持たせてもミロカロスの突破は厳しいため、メタグロス側の対抗手段としては『どくどく』+『まもる』型が筆頭となる。ミロカロスが『ねむる』や『リフレッシュ』持ちの場合はそれをも対策されてしまうが、多くのポケモンが詰まされてしまうレジアイス+ミロカロスの硬い並びを単体で崩せる意義は大きい。

【型サンプル】

☆『どくどく』+『まもる』型
特性:クリアボディ
性格:しんちょう
実数値:187-155-150-*-156-91
努力値:252-0-0-0-252-4
技:コメットパンチ じしん どくどく まもる
持ち物:たべのこし


ヘラクロス

 『こだわりハチマキ』『メガホーン』による突破力が高く、安定して受けることが難しいポケモンレジアイス+ミロカロスの並びを容易に崩すことができ、低火力のポケモンを軒並み詰ませてしまうレジスチルに対する格闘打点も自然に確保できる。ボーマンダが最大の弱点であるため、ミロカロスソルロックソーナンス等で厚く見ながら決定力を出していきたい(そのボーマンダすらも、A-1ランクの『こだわりハチマキ』『メガホーン』+同『めざめるパワー岩』により高確率で倒せる)。以下で紹介している型は、C167レジアイスの『れいとうビーム』を99.7%で2発耐えられ、準速ラグラージ+1の素早さとなっている。

【型サンプル】

☆『こだわりハチマキ』型
特性:こんじょう
性格:いじっぱり
実数値:155-194-95-*-139-113 ※理想個体値は 31-31-30-31-30-30
努力値:0-252-0-0-192-64
技:メガホーン かわらわり めざめるパワー岩 きあいパンチ
持ち物:こだわりハチマキ


フーディン

 受け役割はほぼ持っていないが、高い素早さから『めいそう』+『サイコキネシス』で決定力を発揮できるポケモン。同じく『めいそう』持ちのエスパータイプであるサーナイトブーピッグと比較すると、フーディンは耐久が低い代わりに素早さと火力が高いため、この環境で受けることが難しいボーマンダヘラクロス・ケッキングを上から叩くことができ、自身も受けられにくいという強さを持っている。『アンコール』を持たせると積み合いに強くなり起点作成技としても使えるが、前期シングル環境で『アンコール』を持たせる場合は『ほのおのパンチ』との両立ができないため、最速を維持するか、最速を切りながら『めざめるパワー炎』で鋼タイプへの打点を確保するかの選択を迫られることになる。

【型サンプル】

☆『めいそう』型
特性:シンクロ
性格:おくびょう
実数値:131-*-65-187-105-189
努力値:4-0-0-252-0-252
技:サイコキネシス ほのおのパンチ めいそう じこさいせい
持ち物:ラムのみ


ソーナンス

 どの世代でも特性『かげふみ』を利用した 1:1交換を狙うポケモンであるが、第三世代前期シングルの環境でも同様の性質を持つ。特に、『いじっぱり』ボーマンダの『こだわりハチマキ』『すてみタックル』を99%で2発耐えられるという点が非常に重要になる。この環境のソーナンスは高火力で押し切られることが少ない代わりに『どくどく』によって抵抗されてしまうことが起こりがちであるため、『こんじょう』ヘラクロス等と組ませたい。また、第三世代の『かげふみ』の仕様に伴ったルールによりソーナンス入りミラーでは選出できず、サーナイトで『かげふみ』を『トレース』してから『めいそう』を6積みするというパターンにも弱い。非常に強力なポケモンではあるものの、『かげふみ』の仕様により選出段階で腐らされることに留意しながら構築を組む必要がある。

【型サンプル】

☆基本型
特性:かげふみ
性格:ずぶとい
実数値:266-*-121-*-110-53
努力値:4-0-252-0-252-0
技:カウンター ミラーコート アンコール みちづれ
持ち物:ラムのみ

*1:執筆時点