ポケモン第3世代シングル対戦におけるラティアスとラティオス。
この2体が本格的に考察され始めたのは「ラティアス・ラティオスありルール」のオフ会が開催された2015年からで、他のポケモンに比べるとその歴史はまだ浅い。
当記事では、近年の比較的短い期間ながらも進展したこの2体の考察・評価の変遷について、所感を交えながら記載する。
※主に私の知る限りの記載であるため、2012年以前の部分で間違い等がありましたらご指摘下さい。
近年の考察については『ポケモンエメラルドシングルバトル考察本』のラティアス・ラティオスの項と「最上位ポケモン雑感まとめ」も適宜ご参照下さい。
- 第3世代シングル対戦ルールの変遷
- 「ラティなしルール」が主流の頃の考察
- 2012年:「ラティありルール」の大会開催
- 2015年:「くどオフ」の開催と環境初期の考察
- 2016年の進展
- 2017年の進展
- 2018年~2019年の進展
- 2020年~2021年の進展
- 2022年現在とこれから
第3世代シングル対戦ルールの変遷
冒頭の通り、第3世代シングルにおけるラティアスとラティオスが本格的に考察され始めるきっかけとなったのは、2015年8月に開催された「くどオフ」である。
第3世代環境当時の「あんぐらオフ」では「ラティなしルール」が主に採用されていたが、「くどオフ」から「ラティありルール」が採用され、現在はこちらが主流となっている。
※当時の「あんぐらオフ」のルールの変遷はこちらを参照。
また、2015年~2017年はルールの過渡期・混在期であり、「くどオフ」を境にルールが完全に切り替わった訳ではなく、しばらくは「ラティなしルール」でも対戦・考察されていた。
近年は「ラティありルール」が主流になっているが、2018年12月に開催された「第1回関東エメラルドオフ」では意図的に「ラティなしルール」の大会が行われた。
「ラティなしルール」が主流の頃の考察
「ラティなしルール」が主流の頃のラティアス・ラティオスの考察については、しゃわさんのサイトとブログを参照。
2010年代前半までの考察が他にありましたら教えて下さい。
☆ラティアス・ラティオスの単体考察
「GBAキャラ別雑感 - ラティアス」,『SEKIEIGYM』
「GBAキャラ別雑感 - ラティオス」,『SEKIEIGYM』
「ラティの昔の強さと今の弱さ」,『トキワのミドリ - しゃわのポケモン記 -』,(2009.9.11)
「ラティアス」,『トキワのミドリ - しゃわのポケモン記 -』,(2011.5.23)
☆「ラティありルール」を想定したキャラランク
「キャラランク」,『SEKIEIGYM』,(2013.4)
☆ラティに1~3つの攻撃技を持たせる場合の有効範囲とラティミラーなどについて
「ラティの技構成」,『SEKIEIGYM』
各記事やキャラランクを参照すると、当時の評価はラティアス>ラティオス。
型は色々あるが、「相手のカビゴンとメタグロスをどうするか」というテーマは当時も変わっていないように見えた。
最後の「ラティの技構成」の記事から引用させて頂くと、以下の考察がされていた。
>2個の技で広く対応したい場合は、ドラクロ、めざ炎が良さそうというのが筆者の結論である。
>・めざ炎の欠点
>ズバリ素早さが最速ではなくなること。対ゲンガーなど110族に先制出来なくなり、対ラティの同種対決でも若干不利になる。
>・対カビゴンの突破
>瞑想&甘える&再生の3つが同時にあれば楽だが、それをすると攻撃技が1個になり汎用性が低くなってメタグロスなどに簡単に止められる。
>突破を目指す際、メインウエポンは特防ダウンがある上威力も若干高いサイコキネシスのほうが対カビにおいては良いだろう。
>ただ、サイコをメインウエポンにした場合、一つで対ラティと対グロスに同時に効果的な技が無いというのがネックになる。
2012年:「ラティありルール」の大会開催
2012年8月、某所で「ラティありルール」の大会が開催された。
この大会の詳細な結果はネット上に残存していないが、7人中4人がラティアスを使用し、ラティオスの使用者はいなかった。
☆当記事の趣旨と関係ない余談:この大会のstoicさんとVenomさんの対戦が千日手に陥り、両者が交代安定になってしまったため、190ターン目で引き分けとなりました。2012年当時私はまだGBA対戦を始めていませんでしたが、とても印象深い出来事でした。
☆stoicさんによる当時の記事
①:「第三回GBA大会使用構築」,『stoicのポケモンGBAメモ帳(二)』,(2012.8.25)
②:「ライコウ+残飯カビ+エアームド、その他」,『stoicのポケモンGBAメモ帳(二)』,(2012.8.26)
③:「GBAいろいろ番外編(唐突にキャラランクもとにした雑感)」,『stoicのポケモンGBAメモ帳(二)』,(2012.9.11)
2つ目の記事の終盤から引用させて頂くと、以下の記述が印象的に思えた。
>漠然とした印象だけど、どうもラティ有り環境はあまりに受けゲーだなあw
>決定力の起点になるキャラはラティの起点にもなるから、おのずと長期戦になってしまう。
現在の視点から環境を捉えると、「受けゲー」ではないとは思うものの、「ラティありルール」はハピナス絡みの並びが強くなることもあって、環境全体の試合展開は「ラティなしルール」が主流だった2014年~2015年頃に比べるとややスローになっている感覚がある。
☆2014年の速度感についての参考記事
シンさん:「最近のGBAで思ったこと殴り書き」,『りゅうせいぐん を はずさない』,(2014.9.16)
poe:「【GBA】カビゴンとメタグロスの相性関係の変遷」,『poe式パンセ』,(2018.9.9)
2015年:「くどオフ」の開催と環境初期の考察
2013年~2014年は従来から引き続き「ラティなしルール」で対戦・考察が行われていた。
そして、2015年8月に「くどオフ」が開催されることが4月のこちらの記事で発表された。
これまで対戦・考察される機会の少なかった「ラティありルール」での開催ということで、各プレイヤーは来たる日に向けて考察を重ねていた。
オフ会当日を迎えるまでのラティアス・ラティオス絡みのアウトプットとしては、以下の記事がある。
シンさん:「ラティエア受けループ」,『りゅうせいぐん を はずさない』,(2015.6.4)
ラティアス入りの受け構築は後年洗練されていくことになるが、原案はこの記事だったのだろう。
その後「くどオフ」が開催され、ラティアス・ラティオスはどちらも9人中2人ずつが使用していたという結果となった。
「ラティありルール」はこれまでの考察の蓄積がなかったこともあり使用率はやや控えめで、「ラティなしルール」の構築に近いものが多かった。
私は「ドラゴンクロー/甘える/瞑想/自己再生@ラムのみ」のラティアスを使用したものの、メタグロス使用者が多く5戦中で1回しか選出できなかった。
Mockyさんは「サイコキネシス/ドラゴンクロー/めざ炎/電磁波@ラムのみ」のラティオスを使用していたとのこと。
当時の構築記事は以下を参照。
☆2015年以降で初出のラティアスorラティオス入り構築
poe:「【GBA】くどオフ使用構築:カビガラサンダー」,『poe式パンセ』,(2015.8.2)
Mockyさん:「第1回くどオフ使用構築 & 対戦動画」,『Mocky's memo』,(2015.8.3)
☆ラティアス入りの受け構築
くどやんさん:「【GBA】カビエアサマヨアスバナラプラス」,『ドクロッグはさいつよ』,(2015.8.4)
オフ会後、「甘える+瞑想+自己再生型ラティアスの対カビゴン性能って怪しくないか?」という論点に初めて切り込んだ記事がアップされる。
しゃわさん:「瞑想甘えるラティアスの弱点」,『トキワのミドリ - しゃわのポケモン記 -』,(2015.12.8)
>実は恩返しカビでも十分に勝率確保が出来ている。
という点も重要。
ここまで記載してきたことから分かるように、甘える+瞑想型のラティアスに身代わり@食べ残しを持たせる発想は2018年まで出てきていない。
また、甘える+瞑想+自己再生型は対カビゴン性能について言及されることが多いが、メタグロスも普通に厳しく、甘える+瞑想型ラティアスとソーナンスを組ませる発想も2018年までなかった。
そして、2015年時点ではラティオスはまだあまり考察されておらず、評価も定まっていない。
このような流れを経て、2016年へと繋がっていくことになる。
2016年の進展
上記の流れを踏まえて、2016年はラティオスの進展が目立った。
経緯としては、まずラティアスの甘えるや自己再生を切ったリフレクター+瞑想型が考案される。
さらに、同型のラティを採用する場合においては、ラティアスよりもラティオスの方が数値的な要請を満たしやすいことが判明し、ラティオスの考察が突き詰められていった。
☆リフレクター+瞑想型ラティオスの記事
poe:「【GBA】ラティオスの(+2)ドラクロで残飯カビゴンを3発以内で倒せるCラインごとの確率、他」,『poe式パンセ』,(2016.7.19)
その後、2016年8月に「第2回くどオフ」が開催され、ラティアスが19人中3人に対してラティオスが6人と、ラティオスが少し使用率を伸ばした。
この時、拘り鉢巻メタグロスに対面で有利を取ることができる耐久振りめざ炎ラティオスが考案された。
オフ会後、リフレクター+瞑想型ラティオスにめざ炎を搭載する着想も登場した。
☆耐久振りめざ炎ラティオス入りの構築
Mockyさん:「第2回くどオフ使用構築」,『Mocky's memo』,(2016.8.9)
☆めざ炎持ちのリフレクター+瞑想型ラティオスの記事
1192さん:「【GBAシングル】リフめざ炎ラティオス」,『なんぞこれ』,(2016.9.9)
2015年の課題であった「対カビゴン・メタグロス」を模索した結果が2016年の進展であったと言える。
2016年を通して、ラティアスに関しては進展がなかった。
この時期の評価はラティオス>ラティアス。
個人的には、ラティオスがラティアスを明確に上回っていたのはこの時期だけだと思っている。
2017年の進展
2017年3月に「第3回くどオフ」が開催された。
決勝は下記の2人の対戦で、お互いのラティアス・ラティオスはそれぞれ独自の技(甘える/願い事 or 竜の舞/置き土産)を持っていない。
つまり、どちらも技ではなく数値的な要請から構築に適合した採用例であると言える。
当時はまだラティ+ラグラージの並びは第3世代シングルでは前例がなく、
私の受け構築のサンダーサイドン→ラティアスラグラージの変更は大きな決断だったが、上手くはまってくれた。
☆ラティアス+ラグラージ入りの受け構築
poe:「【GBA】第3回くどオフ使用構築:ハピエアゲンガー(repackage)」,『poe式パンセ』,(2017.3.20)
☆リフレクター+波乗りラティオス入りの構築
1192さん:「【3世代シングル】カビグロスサンダーゲンガー結論」,『なんぞこれ』,(2017.3.21)
また、2017年秋頃にいばみが型が登場した(構築記事としての初出は2018年)。
高い素早さと優秀な耐性から繰り出されるいばみがは強力で、ラティアス・ラティオスのどちらでも運用することができる。
いばみが電磁波型はラティミラーの強さと対メタグロス性能を不完全ながら両取りできるという特徴もある。
☆初出のいばみがラティオス入り構築
ウホホウホさん:「後期シングル いばみがラティパ」,『Goreamlive』,(2018.3.11)
この時期の個人的な評価はラティアス≒ラティオス。
個人的には2017年の時点で両者の差はなくなったが、ラティオスの方をより評価しているプレイヤーも多かった。
使用率はどちらもまだ控えめ。
「第3回くどオフ」(2017.3.19):16人中ラティオス4、ラティアス1
「第4回くどオフ」(2017.8.26):13人中ラティオス3、ラティアス2
2018年~2019年の進展
2018年初頭、甘える+身代わり+瞑想型のラティアス(+ソーナンス)が登場した(構築記事としての初出は2019年)。
後出しされたカビゴンを容易に突破でき、カビゴンに対面からでも有利を取れる型で、
従来の甘える+瞑想型ラティアスが抱えていた対カビゴンにおける懸念点を克服した型である。
なお、ラティアスのこの型の存在が、私がハピナス入り構築を突き詰めて使用してきた理由の1つになっている。
☆初出の甘える+身代わり+瞑想型ラティアス入り構築
poe:「【GBA】第2回関東エメラルドオフ使用構築:呪い電磁波ジュペッタ入り」,『poe式パンセ』,(2019.9.15)
また、竜の舞ラティオスも徐々に見られるようになる。
現在もそれなりに使用されている型であるが、狙った範囲の相手を差し切れるのかどうかは気になる(全対応の範囲は実現できない)。
使った経験がないので何とも言えないところ。
2018年夏頃、ラティオスは臆病でも無振りヘラクロスをサイコキネシスで1発で倒せるので、ヘラクロスへの対面性能をラティアスよりも確保しやすいという点を再認識して個人的に評価が上がったところもあった。
(「ノイ棒」配分を1発で倒すには、控えめ+曲がったスプーンが必要。)
「上位制限ルール」で開催された「第7回くどオフ」では、いばみがラティアスの攻撃技を竜の息吹にした型が使用された。
置き土産ラティオスは散発的に使われてきたが、構築記事としての初出は2020年だと思われる。開拓の余地あり。
☆初出の竜の舞ラティオス入り構築
1192さん:「【3世代シングル】対面志向+アンチ起点系+アンチ受けループ」,『なんぞこれ』,(2018.3.25)
☆初出のいばみがラティアス入り構築 ※上位制限ルール
ピーナツさん:「【GBA上位制限シングル】第7回くどオフ行ってきました」,『ピーナツの日記』,(2019.5.2)
☆初出の置き土産ラティオス入り構築
Baoさん:「【ラティあり後期】第7回エメラルドミーティング使用構築 太鼓エースカビゴン」,『ポケ屋の根城』,(2020.1.2)
この時期の個人的な評価はラティアス≧ラティオスで、現在に至るまで変わっていない。
個人的な評価と周りの評価が最も乖離していた時期かもしれない。
第5回と第6回にラティオスが大きく使用率を伸ばしたが、第8回にはその差が縮まった。※第7回は「上位制限ルール」のため除外
「第5回くどオフ」(2018.3.24):14人中ラティオス7、ラティアス2
「第6回くどオフ」(2018.9.23):21人中ラティオス10、ラティアス2
「第8回くどオフ」(2019.10.5):23人中ラティオス5、ラティアス4
☆ラティの参入による他のポケモンへの影響についての参考記事
stoicさん:「GBAキャラランク(くどオフ環境)」,『stoicのポケモンGBAメモ帳(二)』,(2018.11.2)
2020年~2021年の進展
2020年~2021年の進展は、甘えるラティアスをエースではなくサポートとして使用する動きが見られるようになった。
例:ドラゴンクロー/電磁波/甘える/自己再生@クラボのみ
また、ラティアスにめざ炎を搭載する案はこれまで机上では考えられてきたが、実際にも見られるようになった。
例えば控えめラティアスのめざ炎は、少し耐久が甘いメタグロスを2発で倒す程度の火力は出せるため、
甘える+身代わり+瞑想型のようなメタグロスに弱い型の裏択として価値があるかもしれない。
(選出~立ち回り段階で甘える型を想定させつつ、ラティオスに近い動かし方ができる。)
☆めざ炎ラティアス入りの構築
けつばんさん:「GBA対戦会イワトンリーグ2021簡易参加記」,『カビチュウ』,(2021.9.25)